40代で会社を辞めました

会社を退職してからのリアルな話

個人事業の開業時に一番重要なこととは?

実のところ、開業時に限ってやるべきことはあまりありません。「開業」というと何か特別な響きがあるかもしれませんが「開業」自体はあくまで事務手続き程度に考えたおいたほうが良いと思います。

開業したからといって事業が回り始めることは絶対になく、むしろ「開業前にお客さんを獲得できているかどうか」「開業後にお客さんや売上を増やすことができるかどうか」の方がよほど重要です。

つまり「開業」とは目的ではなく、税務署への届出のことを指します。

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もし、開業前後のタイミングでお客さんが見込めている場合には、初回の受注に向けて営業活動を続けます。しかし、なかなか見込み客ができない状態が続いているようであれば、とくかくお客さん第一号の確保に集中しましょう。事務手続きの「開業届」はその後に提出しても間に合います。

一番重要なことはお客さん第一号の獲得

開業の前後に行う営業活動

開業前後の営業活動には2つの目的があります。

1つ目の目的は、初回売上のための集客活動です。お客さんがいないと何も始まりません。法人を相手にした事業の場合、初めは1社からの受注だけでも十分です。

2つ目はリサーチのためです。受注を目指すのはもちろん、「受注できた」「受注できなかった」の結果にかかわらず、“お客さんの声”を集めることにも意識を向ける必要があります。

最初にお客さんの声を集める理由

事業の立ち上げ時は、大勢の“お客さんの声”が反映されていない状態でのスタートとなります。つまり実際にウケるかどうかはやってみないとわかりません。
事業を開始した後だけではなく、事業を始める前の段階でもキチンと第三者の感想や意見を拾っておくことで、成果(商品)をお客さんのニーズに近づけられるように修正できます。

まだお客さんが見込めていない状態の場合は、いきなり売り込むのではなく、リハーサルのつもりでより多くの“第三者”の評価をもらうようにすれば、サービス改善につながりますし、結果的に最初の売上までの期間を短縮できるかもしれません。
また、すでにお客さんが見込めている場合であっても、あらかじめ第三者の客観的な反応・評価は押さえておいた方がいいと思います。

お客さんはすべてアカの他人

“お客さんの声”を集めるためにアプローチする第三者は、知人ではなくアカの他人にすべきだと思います。
その理由は、この先獲得していくお客さんはアカの他人がメインになります。自分のことを何も知らない人であれば、評価にバイアスがかかりにくくなり、より率直な反応が得られるためです。

アカの他人にアプローチした結果、まったく相手にされなかったとしても、それは貴重なフィードバックになります。必ずどこかに改善点があるはずです。

また、アプローチの回数はより多くしたほうが良いとも思います。アプローチの数が少ないと「評価が少ない > ニーズがわからない > 受注まで時間がかかる」となりかねないためです。

受注は確率に過ぎません。お客さんのニーズは必ずどこかにあるので、改善を重ねていけばきっと受注できるはずです。100回アプローチしてダメでも、101回目に受注できるかもしれないのです。チャンスがどこでやってくるのか予測できないだけです。

絶対に気をつけたいこと

ここで気をつけたいポイントがあります。いくら早く受注したいからといっても、焦って商材の価値を低く下げることには慎重になったほうがいいと思います。

その理由は2つあります。

1つは、商材の価値を低くすれば、たしかに営業機会は増えるかもしれません。しかし簡単に自分の営業機会が増える、ということは同時に競合も増えます。
つまり機会は増えたとしても、受注の確率はより低くなります。そうすると、営業活動に費やす時間も比例して増えます。組織力を持つほうが有利になるのは言うまでもありません。

2つ目の理由は、当初考えていた価値よりも下げてスタートすることで、競合よりも安価で売り出してしまう危険があります。安値から始めれば自分のウリは「安さ」になります。
たとえ商材に素晴らしい価値があったとしても、一度安く売ったものを後から高くするのはものすごく大変です。というよりも、まず不可能でしょう。もちろんお客さんから見て適正な価値を提供することが大前提です。

お客さんの反応がイマイチであれば、自分の商材がお客さんのニーズを満たしていないのかもしれません。しかしその場合は値段を下げるのではなく、価値を上げる方向に改善したほうがいいと思います。他人をコントロールするよりも自分をコントロールするほうがはるかに簡単です。

本来、事業の独自性(個性)を高めることで、受注の機会と確率、さらには売値を上げるべきところを、自分から商材の価値を低めることで真逆の方向に進んでしまいます。

そして商材の価値を低くした結果、「競合が増える > 受注確率が下がる > 疲れるばかりで大した売上にならない > 値段に見合ったものにする > 個性がなくなる」といった悪循環に陥ってしまうかもしれません。

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それでも、そもそも何かが上手くいかないようであれば、もう一度原点に立ち戻ってみることをおすすめします。

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ちょっと補足です。

私は、インターネット上によくあるフリーランス向けの総合サイトやスキルの個人売買のようなサービスを利用して受注を狙うのは個人的におすすめしません。貴重な時間をムダに費やす可能性が高くなると思います。

総合的なマッチングサービスの場合、専門性が低い人も含めて多種多様な人たちが登録しますし、サイトを訪問するユーザーの目的もバラバラです。当然、自分の価値も雑多な情報の中に埋もれますので受注確率は低くなり、受注できたとしてもびっくりするほど安値になるかもしれません。また、自分からの能動的な営業活動やマーケティングリサーチも自由にはできません。もし仮にマッチングサービスを使う場合でも、自分の事業に専門特化したサービスを活用したほうが良いでしょう。

営業テクニックがなくても大丈夫

「営業活動」と聞くと、トーク力や接遇スキルなどをイメージして苦手意識を持つ人がいるかもしれません。しかしトーク力や接遇スキルなど、あれはテクニックの話です。
確かにに無いよりも有ったほうが有利になるでしょう。それでもテクニックは受注の絶対条件にはなりません。

個人事業主といえども経営者です。経営に必要な営業活動とは、いかにすればお客さんにマッチして喜んでもらえるかを考えて判断し、試行錯誤を重ねて独自性を出すように導くことです。
もし「自分は口ベタだから」と思っていたとしても、尻込みする必要はまったくありません。トーク力や接遇スキルのある人は世の中に掃いて捨てるほどいますが、自分の事業の価値を高められる唯一無二の存在は本人だけです。